背中に哀愁漂う親父と、やさしく見守る犬。

天気が悪い日、老犬つれて、散歩しているのは、いつも親父さん。

雨がみぞれに変って、底冷えが身に堪える時も、散歩しているのは、いつも親父さん。

梅雨の真っ最中、勝手に泥遊びを始めて、馬鹿犬に、洗うのが面倒臭いスニーカーをドロドロにされ、おかあさんから叱られるのは、いつも親父さんだ・・・わんこに天気は関係ない。

横浜の保土ヶ谷や戸塚の下町でも、緑園都市やあざみ野や青葉台の高級住宅地でも、鶴見区や川崎の工業地帯の街外れでも・・・親父さんの格好は大差ない・・・わんこに下町と高級住宅地の違いは関係ない・・・時々うんこをひろうのは、どこでも同じ。

会社にケチな課長が居た。残業で疲れ切った皆を無理やり、場末のスナックに連れて行き、しっかり割り缶にするから、みんな嫌がる。今日はいつもの何倍もみんな疲れている。皆疲れきってるから、誰もフィリピーナのおねえちゃんと、口も利こうともしないから一人で怒っている。課長が携帯で、奥さんから叱られている・・・課長がめずらしく奢ってくれてお開き。課長にお礼を云うと、「はよー帰って、犬の散歩でもしろって嫁さん云うから今日は、はよー帰る。じゃーねー。」

・・・その日は寒くて、少し、路面凍結をしている。それでも親父は犬と散歩を欠かさない・・・犬に天気は関係ない。信号が変わったらすぐお家。犬は少し疲れているお父さんに、いつもより、お手とお代わりのサービスを多めにしていた・・・俺の事、わかっているのはペスだけだ。ひとしきり、ぎゅっと抱っこして貰ったペスは満ち足りて、いつもより少しだけ行儀よく、足を揃えて親父さんの背中を見つめる・・・おやすみ。